ル・フー・ドゥ・イッセイという名のまぼろし

「少しだけ人とは違うものが好きな自分」が好き、幼い頃からそんな傾向がありました。

そのせいか、自分だけが見つけた(と思っている)とびきりステキなものを愛でる時間にたいそう喜びを感じていましたね。

でも、わたしの評価とは裏腹に、とびきりステキなものはすぐに世の中から姿を消すということに気付き始めたんです。

それでも、わたしの「とびきりステキなもの」に、今でも忘れられない逸品!と思うものが思いつくだけでも10以上あります。

そこで、とびきりステキなものを忘れたくないという自己補完と記録のために「廃盤コレクション」を展開していきたいと思います。

記念すべき第1回は、香水です。

【廃盤コレクション】001

ル・フー・ドゥ・イッセイ

大学4年生の3月、卒業式をすっぽかして母と2人でシンガポール旅行に行きました。ふらりと。

YMCAを予約し(てもらい)、以前から行ってみたいと思っていたシンガポール動物園のナイトサファリやオランウータンとの朝食を楽しみ、あとは美味しいものを食べて買い物するだけの、のんびりした質素な海外旅行でした。確か航空券もたまっていた祖母のマイルを活用した記憶…。

買い物の途中、デパートの一画でわたしは「それ」に恋をしました。

何もかもが初めての感覚で、一度は売り場を離れたものの、どうしても「それ」が気になって仕方ないので、母に理由を説明し二人で店まで戻りました。

少し学生の自分には贅沢であるとも思ったけれど、旅の思い出として購入しました。

情熱的な炎のようなオレンジ色がかった赤い球。少し鼻をつくような刺激とスパイシーさをまとった甘い香り。

それは、当時日本ではまだ発売されていなかったイッセイ・ミヤケの「ル・フー・ドゥ・イッセイ」という香水でした。

香水名:ルフードゥイッセイ Le Feu d’Issey オード・トワレ(現在廃盤)
ブランド:イッセイ・ミヤケ
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:1998年

自分には少し似合わないかもしれない、心地よい香りともまたちがう、でも気になって仕方ない。まさに恋(笑)。

その様子が、こちらに分かりやすく書かれてました。

ルフードゥイッセイ (ジャック・キャヴァリエ)

引用元の書籍は、Amazonのレビューによるとかなり辛口なものも含まれているようですが、この香水に関してはベタ褒めです。

残念ながらボトルも含め、いまわたしの手元には何も残っていません。その香りの記憶以外は。

探せば当時発売された商品を探すことはできるかもしれませんが、すでに酸化してしまって当時の華やかな香りを嗅ぐことは難しいでしょう。

せめて似たような香りを体験できれば、と思うのですが、そもそも個性的すぎて近い香りにすら出会ったことがありません。テクノロジーは日々発展していますが、香りのセンシングはまだまだ波動だけで処理できるものではないのでなかなか革新的な発明は生まれません。

てっとりばやく、イッセイ・ミヤケから再販してくれればよいのですが。。

小説「ラストレシピ」の料理人のごとく、香りの再現ができる方、どこかにいませんかね(笑)?